日本機械工具工業会

平成25年度 日本機械工具工業会賞

作業・事務・生産技術等の改善賞
WC粉末出荷用ドラム缶のリユース化 株式会社アライドタングステン
中沢 謙太なかざわ けんた

概略:

WC粉末を出荷する際に使用するドラム缶は、ユーザーで粉末使用後に破棄されていることが多い。そこで下記1~3を目的とし、ユーザー数社とドラム缶リユースの運用を開始した。
 1.ドラム缶の廃棄(リサイクル)に掛かる環境負荷の軽減。
 2.製品輸送時の戻り便を活用し、効率良くドラム缶を循環させる。
 3.環境配慮面でユーザー、当社の双方にメリット大。


効果:

ドラム缶のリユース化は、0%⇒60%に向上。
 1.リユース化により、2012年度には13.5トンの鋼材廃棄量を削減することが出来た。
 2.ドラム缶の新規購入回数減少で、運送に伴うCO2排出量を年間3トン削減。  
 3.ドラム缶返却時にパレットも同時返却頂けるようになり、ユーザーとの資源循環型物流体制の構築に繋がった。





展示工具運搬システムの構築 ダイジェット工業株式会社
木村  聡(きむら さとる)

背景・問題点:

展示会にて工具を展示する際は、工具をケースから取り出し、展示台に個々にセットしており長時間作業を要していた。展示会終了後の撤収も同様に工具の片付けに長時間かかっていた。特にJIMTOFなどの大規模な展示会では、展示工具の種類が多く煩雑で、最終日の翌日まで作業するケースがあった。


内容:

・かかる問題を解決するために、工具、展示台を専用の運搬ケースから取り出すだけで展示が可能となるシステムを構築し、工具展示作業の時間短縮を図った。
・システムは展示台を工夫し、展示工具がセットされた状態で個々の専用プラスチックケースに入れ、その上にクッション材を置き、蓋をするだけのシンプルな構造とした。
・クッション材料、形状は、運搬時に工具が動き損傷しないこと、ケース、展示台、クッション材は作業が誰にでも円滑に作業が出来るように識別等を工夫した。


効果:

・1アイテムあたりの展示・撤収作業時間…7分→10秒に短縮(6.83分の削減)
・削減時間(2012年実績)
  大規模展示会・100アイテム展示…年2回
  小規模展示会・15アイテム展示…年13回
  小規模展示会・15アイテム展示…年13回
  講習会・5アイテム展示…年37回
   6.83分×(2×100+13×15+37×5)×2回(展示・撤収)=7,923分 132時間の短縮。





焼結炉・CVD炉の自動停止および連絡手段の確保 株式会社タンガロイ
鈴木 隆一(すずき りゅういち)  二宮 貴洋(にのみや たかひろ)  赤羽  弘(あかばね ひろし)

特徴:

従来からガス配管の漏れや、設備本体の圧力異常、UPSや自家発電機の接続で瞬停や停電時の冷却水確保等で非常時の危険回避策を運用してきた。しかし東日本大震災が発生した場合に、想定していた二次的なガス漏れ、停電等の影響で停止する設備はそれらを理由に停止したが、設備本体に異常が発生せず運転が継続し、場合によっては発火する危険状態が見られた。そこで感震器の設置および従来からの異常時対策との連動を行い、再発防止を行った。また通信手段の確保として無線機を設置した。


内容:

1.感震器の設置 焼結室:4個、CVD室3個 
2.地震発生時の自動停止:各部屋とも1個以上の感震器で250gal(震度5)以上を検出した場合。
  焼結室:設備停止  CVD室:設備停止/ガス供給装置停止


効果:

二次災害の可能性を大幅に低減
人、設備、そして建屋への二次災害の可能性を大幅に低減。
※シミュレーションテスト
 CVD室にてシミュレーションテストの結果、3秒以内に停止が完了。無線装置による通信が可能な事も確認済み。




海外向け梱包業務の効率化 富士精工株式会社
中根 直也(なかね なおや)

改善前の問題点:

・各輸出先により、梱包、発送業務がばらばらで女性担当者が製品管理室に出向き、発送品を移動指示していた。
 女性担当者:毎日の指示作業→工数大 重量物の移動→危険作業
 物流管理課担当者:梱包、発送作業→発送日に残業対応


改善点:

1.各輸出先の共通作業、個別作業を層別した。
2.マトリックスに従い、入庫伝票に、梱包可否が自動表示されるようにした。
3.入庫伝票表示に従い、品物の置き場と、次工程の梱包、発送内容を明確にし、物流管理課内だけでの作業を可能にした。(男性作業へ移行)


効果:

・女性担当者の業務時間短縮に寄与できた。
・女性担当者が、品物の移動をしなくても良くなった。→安全の確保
・物流管理課の工数は増えたが、物流管理課主導の梱包作業になった為、梱包作業の分散、平準化。他の物流管理課の業務との兼ね合いも可能になった。→定時間内での作業
*1,640分/月の工数低減を達成。





特殊軸の生産性向上 富士精工株式会社
安村  知(やすむら とも)  熊谷  浩(くまたに ひろし)

背景・問題点

当社のいわき工場のエネルギー(電力、灯油)消費量は、空調への負荷が増大する夏場が最も大きくなる。エネルギー消費を抑えるためには、夏場の空調を見直す必要があった。工場内は、品質維持のために、温度・湿度ともに管理されている。夏場は、温度調整に加えて除湿を要する。除湿時は、空調機内に取り込んだ空気を、結露する温度(露点温度)まで冷却することで、空気中の水分を除去している。このときの温度は、室温よりも十分に低い為に、空調機の吹き出しの空気温度(給気温度)を、再加熱することで調整しなければならない。この時に要するエネルギーは、他の季節と比較し非常に大きい。省エネのために、工場内の温湿度管理に影響を及ぼすことは、製品品質管理上選択できなかった。そこで、空調機側は変更せず、各々の熱源発生設備に対して、省エネに取り組むこととした。


活動の内容

冷却するための冷熱源としてターボ冷凍機(電力消費設備)で作られた冷水を、加熱する為の温熱源として蒸気ボイラ(灯油消費設備)で作られた蒸気を、各々空調機に供給している。これらの熱源発生設備は、消費するエネルギーも、作り出すエネルギーも異なる設備であることから、同一の視点・手法での省エネは不可能であった。そこで、各々の設備に対して別々のチームを構成し、異なる2つのアプローチにより省エネに取り組むこととした。
【冷熱源(ターボ冷凍機の電力消費量削減)】
  冷水温度を上げる、冷水流量を最適化する、冷凍機同時稼働台数の抑制
【温熱源(蒸気ボイラーの灯油消費量削減)】
  燃焼温度(燃焼量)を下げる、複数台制御の最適化、蒸気圧力を下げる





産業廃棄物のゼロエミッションの達成 三菱マテリアル株式会社
平塚 明彦(ひらつか あきひこ)  斉藤 直樹(さいとう なおき)

概要:

環境への負荷低減を図る廃棄物対策として、産業廃棄物リサイクル推進を実施しゼロエミッションを達成した。


背景:

産業廃棄物を適正に処理することは、環境の保全を図るうえで最も基本的な要件のひとつである。廃棄物の排出を抑制し、次に廃棄物になったものについては、再使用、再生利用、熱回収により、できる限りリサイクルを行い、これにより最終埋立処分量の削減を図ることは、環境への負荷の低減の取組みに欠くことのできない課題である。


内容:

事業活動により発生する産業廃棄物のうち、既存の対応ではリサイクルが困難なため最終埋立処分を行っていた汚泥類、ガラス・コンクリートくずは、2008年度では全産業廃棄物の4%を占めていたが、これら産業廃棄物の分別方法を徹底して調査見直しを行いリサイクルの取組みを進めたことにより、2012年度には0.5%未満となりゼロエミッションを達成した。


効果:

産業廃棄物リサイクル率は96%程度で定着していたが、2008年度よりゼロエミッションをあらためて目標に取組み、2012年度に達成することができた。環境を配慮した事業場としてゼロエミッションは、対外アピールは大きいものがある。なお、産業廃棄物処理は環境マネジメントシステムと産廃業者との契約にもとづいて実施しているため効果の持続改善が保たれる。