日本機械工具工業会

2023年(令和5年度) 日本機械工具工業会賞

技術功績大賞
高熱膨張ガラス成形金型用新硬質材料の開発 冨士ダイス株式会社
技術開発本部開発センター材料開発部 エキスパート 小椋 勉(おぐらつとむ)
技術開発本部開発センター材料開発部        三守秀門(みもりひでと)

新規性

高熱膨張を有する新硬質材料の開発により、新しい超高精度ガラス成形を実現した。 近年、自動化機器(自動車、ドローン、監視システム)の実用化に伴い、赤外線透過レンズの需要が高まった。そのレンズガラスの熱膨張係数(9 MK-1以上)は一般ガラス(6~8 MK-1)より大きいため、従来の金型材料(4~5 MK-1)ではガラス成形することができなかった。従来の思想にとらわれない新しい合金設計の下、優れた鏡面性と高熱膨張係数(9 MK-1)を兼備した新硬質材料を開発した。






技術功績賞
高硬度鋼加工用汎用cBN「KBN020」の開発 京セラ㈱
機械工具材料開発部複合工具開発課  森 聡史(もり さとし)、磯部 太志(いそべ ふとし) 、七原 広之(ななはら ひろゆき)

新規性

本開発は、焼入れ鋼切削に必要となるcBN工具において、断続から連続加工の幅広い汎用領域での加工実現を目的として行った。 本製品は、高含有cBN母材に高耐摩耗PVD膜を成膜することで長寿命化を図った。高含有cBNはPVD膜の密着性が悪いことが知られているが、高密着力の下地層を成膜することで解決した。また、母材焼成プロセスも見直し、高熱効率でのcBN母材生産も可能にした。



新ねじ切り旋削加工方法OptiThreadingの開発

サンドビック株式会社

コロマントカンパニー 河田 洋一(かわだ よういち)

新規性

・本開発は旋削ねじ切り加工における新たな加工方法の提案と、その加工に必要な工具の動き(ツールパス)を作成するソフトウェアサービスである。旋削ねじ切り加工は、その性質上、加工条件が自ずと制約されており、加工条件を自由に選べる自由度が低い。その結果、加工中の切りくずは分断されず長く伸びがちになり、これが工具やワークへ絡み付き、様々な問題を引き起こす。本開発の新たな加工法では、この切りくずを効果的に分断することを目的としている。



非鉄金属加工用マルチドリル「MDA型」の開発 住友電工ハードメタル株式会社
デザイン開発部ラウンドツール開発グループ 高橋 洋一(たかはし よういち)
デザイン開発部ラウンドツール開発グループ 西  健太(にし けんた)G長
PVD開発室 田林 大二(たばやし だいじ)主席

新規性

自動車産業をはじめとする各種機械部品において、小型・軽量化を目的にアルミニウム合金など軽材料へ置き換えが進んでいる。その中で切削工具には生産性と品質向上のための高能率条件下での高精度加工に加え、加工負荷の低減やコスト削減のための長寿命化が要求されている。本製品は穴あけ加工に対してこれらの要求に応えるべく、求心性と工具剛性を大きく向上した新形状設計に、新開発のDLCコーティングを組合わせることで、従来製品に対し約2倍以上の高送り(Φ6.0/Vc180m/min/f1.2mm/rev)加工においても高精度加工と加工負荷の低減及び長寿命化を実現した。



難削材転削用材種ACS2500/3000の開発 住友電工ハードメタル株式会社
合金開発部 合金開発グループ 鈴木 優太 (すずき ゆうた) 
合金開発部 合金開発グループ 深江 恒佑 (ふかえ こうすけ)
北海道住電精密㈱ 技術部  中山 裕博 (なかやま やすひろ)

新規性

近年、航空機、石油ガス、医療産業等において、その機器や部品には耐熱性や耐食性に優れるNi基、Co基、Ti合金等の材料が多く使用されている。これらは熱伝導率が低く難削材と呼ばれ、切削加工の際は高い高温強度や反応性も相まって、工具の寿命が著しく低下する問題がある。そこで当社ではこのような難削材の転削加工において、安定長寿命かつ高能率加工を実現する新しい工具材種「ACS2500」および「ACS3000」を開発した。



高能率旋削工具ADD Multi Turnの開発 株式会社タンガロイ
切削工具開発部 旋削工具開発グループ 井田雄大(いだたけひろ)  
生産技術部 生産技術グループ     坂内由昌(ばんないよしまさ)

新規性

本開発品は、外径・端面のみならず、倣い・ヌスミ・仕上げ加工なども可能な高能率旋削工具である。  従来ISO工具に対し、後挽き高送り加工による生産性の向上が大きな狙いであるが、新しいインサート形状とクランプ機構の採用により、前挽きとの交互加工および倣い・ヌスミ・仕上げなどの多方向加工に対応し、安定性が向上したことによって、非切削時間や工具管理本数の削減も提案できる。6コーナインサートであり、環境にも配慮している。



高能率工具「AddForceBarrel」の開発 株式会社タンガロイ
技術本部 切削工具開発部 転削工具開発グループ主任 阿曽 孝洋(あそたかひろ) 
技術本部 工具設計部 いわき設計グループ      堀  一生(ほり いっせい)
マーケティング本部 プロダクトグループ ローテティングツール担当 担当課長 北川 尚史(きたがわ ひさし)

新規性

高精度インサートおよび高精度クランプ機構による長寿命化と、多刃仕様による高能率化を実現する。  金型やブレード等の中仕上げ・仕上げ工程では、加工しろが小さいため、工具の振れ精度が寿命に大きな影響を与える。インサートの拘束基準に工夫を加えることで、切れ刃精度の向上を達成した。  また、独自の切れ刃配置とダブテイルクランプ機構を採用することで、インサートを小型化し、工具の多刃化を可能にした。






技術奨励賞
高硬度材微細加工用エンドミル「2KMB」の開発 京セラ株式会社
機械工具形状開発部ソリッド工具開発課 中園陽二(なかぞの ようじ) 、平松昇太郎(ひらまつ しょうたろう)
機械工具材料開発部PVD開発課 渡邉賢作(わたなべ けんさく)              

新規性

・本開発は金型業界における高硬度材の微細加工(ソリッドボールエンドミル)において、工具集約の実現を目的として行った。 ・本製品は硬度や被削性が異なる様々な高硬度材において長寿命、安定加工、美しい仕上げ面の実現を狙った。特殊2層構造コーティングで耐チッピング性と耐摩耗性の相反する性能を両立し、高硬度材に適した切れ刃強度を有し、且つ優れた切れ味を発揮する独自形状で安定加工と美しい仕上げ面を両立できる点が特徴である。