平成25年度 日本機械工具工業会賞
技術功績賞
高機能ショルダーカッタ「MFWN型」の開発 | 京セラ株式会社 |
古賀 健一郎(こが けんいちろう) 柴田 雅寛(しばた まさひろ) 山道 一輝(やまみち かずき) |
①技術の特徴
MFWN型は、様々な加工に対応できる高機能ショルダーカッタである。ショルダーカッタに求められる性能は、1つのカッタで肩加工、面加工、溝加工、バーチカル加工と様々な加工に対応できる「多様性」である。同時に、1つのカッタで荒加工から仕上げ加工まで対応できることが求められており、優れた耐欠損性、低抵抗、良好な面品位を兼ね備えたカッタが求められている。MFWN型は、これら課題を解決するために開発された製品である。
②新規性/独創性
本製品は、ネガタイプチップの特性を活かすため、主切刃の構成を側面視で、コーナRから若干傾斜させた直線切刃と、さらに大きく傾斜した凹曲線切刃の組合せとし、さらにそれを、コーナRの両側に対称に配置している。その結果、シンプルな構成ながら、90°カッタの高機能性に加え、低抵抗と高信頼性および、ワイパー効果による優れた仕上げ面を実現している。
③協会に対する啓発度
1つのカッタで様々な加工に対応できるため、工具本数の削減、非稼動時間の削減に貢献することができた。また、ダイナミックスラント設計による、低抵抗化と、刃先先端のストレート切刃による優れた耐欠損性により、ユーザー様の生産性向上に貢献した。
また、90度タイプカッターとして、勝手無し両面6コーナチップにより、コスト削減に貢献することができた。【環境調和製品No:2012-007】
極小内径加工用工具「EZバー」の開発 | 京セラ株式会社 |
津田 祐一(つだ ゆういち) 小林 洋司(こばやし ようじ) 白神 晴崇(しらがみ はるたか) |
①技術の特徴
本開発は従来の極小内径加工用工具において問題であったチップ交換時の段取り時間の削減と、精密加工における加工寸法バラツキの抑制を目的とした。
本開発品は、従来の棒状チップの後端部に独自の傾斜面を設けていること、また、スリーブに複数の位置決めピン挿入部を設けていることが特徴である。
②新規性/独創性
棒状チップの後端部に独自の傾斜面を設け、その傾斜部が、位置決めピンと接触することにより、シャンクを下側に押し付ける力が発生する。さらにシャンク固定用ネジの締結力も、同方向のシャンク下側に作用させることにより、刃先の高さ方向と、長手方向の刃先位置が、高精度で割り出しできるようになった。また、位置決めピンを差し替え可能にすることにより、1つのチップで複数の突き出し寸法に対応できるようになった。チップ後端部傾斜面と位置決めピンによる加工中のチップの回り止め効果により、拘束力が向上し、安定加工、加工寸法バラツキの抑制を実現した。
③協会に対する啓発度
EZバーの開発により、簡単位置決め・拘束と、高精度安定加工が可能となった。これにより、段取り時間の削減、寸法不良の削減につながり、ユーザー様の生産性向上に貢献した。
また、1つのチップで複数の突き出し寸法に対応できるため、ユーザー様においてチップの在庫管理の簡素化に貢献した。【環境調和製品No.2012-015】
軟質材用超硬合金PDMの開発 | サンアロイ工業株式会社 |
岩崎 政弘(いわさき まさひろ) 西牧 宏(にしまき ひろし) 中塚 明日美(なかつか あすみ) |
①技術の特徴
本製品は、アルミ、銅等の軟質材料やステンレス等の加工において、耐焼き付き用途の改善を目的とし、低摩擦化を実現した超硬合金である。即ち、鍛造や打ち抜き加工時に生ずる摩擦熱を抑制させることで、超硬合金の結合金属とアルミや銅との焼き付きが改善され、耐摩耗性に優れた材料開発が実現できた。また、超硬金型に作用する加工負荷が軽減することで、耐摩耗性と二律背反の関係にある耐チッピング性にも優れており、各種用途で工具寿命の改善に効果が得られている。
②新規性/独創性
これまで、超硬合金に二硫化モリブデン等を添加することで摩擦を低減した開発事例はあったが、添加材の影響により機械特性が低下し、鍛造、打抜用途の工具として使用することは困難であった。本製品は、添加材から製造工程等の各種改善を図ることで、超硬合金の機械特性を損なうことなく低摩擦化を実現したことに新規性がある。
③協会に対する啓発度
本製品により、鍛造および打ち抜き加工用途の超硬金型寿命を改善するとともに、コーティング処理の困難な金型の焼き付きを改善することで、金型のコスト低減に繋がり、ユーザーの生産性向上に貢献できた。
スミダイヤバインダレスエンドミルの開発 | 住友電工ハードメタル株式会社 住友電気工業株式会社 |
島田 浩之(しまだ ひろゆき) 矢野 和也(やの かずや) 角谷 均(すみや ひろし) |
①技術の特徴
電子機器部品用等の金型では超硬合金のように高硬度で、かつ高精度なものが求められるようになっている。しかし同加工に必要な耐欠損性、耐摩耗性、刃立ち性を十分に兼ね備えた工具材料は未だ無い。当社ではこのようなニーズに応えるために、ナノ多結晶ダイヤモンド工具「スミダイヤバインダレスエンドミル」を開発した。
②新規性/独創性
ナノ多結晶ダイヤモンドは、粒径が数十ナノメートルの微細なダイヤ粒子が高温・高圧下で結合材なしで強固に直接接合した世界初の材料である。これにより、従来ダイヤモンドよりも高硬度で、かつ単結晶のような劈開性を示さないため、高い耐摩耗性、耐欠損性を示す。また刃立性に優れており、良好な加工面粗さが得られる。
③協会に対する啓発度
ナノ多結晶ダイヤモンドを用いたスミダイヤバインダレス工具により、超硬合金のような高硬度材で仕上げ面粗さRa10nm以下の鏡面加工が可能である。また単結晶ダイヤモンド工具等と比較して大幅な長寿命化が可能である。従来加工方法である放電加工+ミガキ工程に比べても形状精度を格段に向上させることができる。
正面フライス工具 スミデュアルミルDGC型の開発 | 住友電工ハードメタル株式会社 |
前田 敦彦(まえだ あつひこ) 馬場 達夫(ばば たつお) 長見 佳成(ながみ よしなり) |
①技術の特徴
本製品は両面使いのネガチップを採用した正面フライスカッタであり、刃先強度を確保しながら、切刃形状の最適化により低抵抗の切削加工が可能である。また、8コーナ用と16コーナ用の異なる形状のチップを同一ボディに取り付けることができる。更に、ワーク端面の強固なバリ発生を抑制する専用チップも開発した。
②新規性/独創性
フライス加工では特にカッタ出口側に出るバリが大きくなりやすい。本製品ではフライス加工でのバリ生成理論に基づいて対策を検討し、主切れ刃とさらい刃の繋ぎ目にチャンファー部を設け、カッタ出口で発生するバリがワークから分断されるようにした。これによりワークに残るバリが大幅に抑制可能となった。
③協会に対する啓発度
本製品のチップは無研磨チップで高精度を達成しており、高品質な製品を安価に提供できる。また新チップ材質の採用による長寿命化も特徴としている。加えてバリ抑制チップにより後工程の負荷低減も可能であり、トータルでユーザーの加工コスト低減に大きく貢献している。 環境調和製品2012年度認定(2012-019)
鋼旋削用コーテッドサーメット T1500Zの開発 | 住友電工ハードメタル株式会社 |
小池 さち子(こいけ さちこ) 広瀬 和弘(ひろせ かずひろ) 福井 治世(ふくい はるよ) |
①技術の特徴
自動車分野等における加工の高能率・高精度化に伴い、仕上げ加工では高負荷条件下での加工面の品質維持による長寿命化が求められている。これに対応するため、優れた耐溶着性と耐摩耗性を有する業界初の超潤滑PVDコーティング『ブリリアントコート』と、同コートを適用したコーテッドサーメット T1500Zを開発した。
②新規性/独創性
ブリリアントコートは鋼との親和性が低い新コーティング材質の適用により被削材の溶着を大幅に低減し、組織の微細化により強度を高めることでチッピングの抑制に成功した。この結果、T1500Zは加工の初期からノンコートサーメットに匹敵する優れた加工面品位が得られ、かつ安定した品位を長時間維持することができる。
③協会に対する啓発度
T1500Zは、従来ノンコートサーメットしか使用できなかった高品位な仕上げ面が要求される用途にも適用可能であり、従来比1.5倍の長寿命化が可能である。また各種鋼部品加工の一発仕上げを実現するなど、コストと品質の両面で多くの顧客に貢献している。環境調和製品2013年度認定(2013-001)
『耐熱合金用ワンカットラジアスエンドミル』の開発 | ダイジェット工業株式会社 |
長田 昌文(ながた まさふみ) 梶 章宏(かじ あきひろ) |
①技術の特徴
本開発は航空機業界を主体とする耐熱合金加工において、びびりの改善を狙った不等分割不等リードラジアスエンドミルである。本製品はびびり抑制を目的として、外周切刃を不等分割不等リードにし、尚且つコーナR部も不等リードギャッシュとすることにより、コーナR部で加工する際でもびびりを低減できるように改良した点に特徴がある。加えて外周切刃すくい角およびコーナRをポジとすることで切れ味がよく溶着を低減することができる。
②新規性/独創性
多数のメーカーから不等分割不等リードエンドミルが発売されているが、コーナR部は不等分割のびびり抑制効果のみであった。これをコーナR部にも不等リードを採用し、その値を最適化することにより、さらにびびり抑制効果を持たせた。ブレード、リブなどのコーナR部を多用する加工において効果が大きい。コーナRを不等リードとしてもコーナR精度を±0.02と高精度を維持している。
③協会に対する啓発度
従来からある不等リードによるびびり抑制技術をコーナR部にも適用することで幅広い加工において優れた切削性を示す。航空機部品加工等において加工面の品質向上、工具の長寿命化に貢献した。環境調和製品認定 NO.2013-004
ステンレス旋削用CVD工具「T6100シリーズ」の開発 | 株式会社タンガロイ |
佐藤 博之(さとう ひろゆき) 福島 直幸(ふくしま なおゆき) |
①技術の特徴
難削材のステンレスを加工した場合、被削材の溶着から工具すくい面の被膜剥離・破壊が生じ損傷が進行する。安定した寿命で加工するために、この被膜破壊・剥離を抑制する技術を確立した。具体的には元素拡散によって、母材/被膜間の密着性を改良(スクラッチ試験で従来被膜より130%性能up)した。
②新規性/独創性
ステンレス切削における寿命ばらつきが、工具すくい面側の損傷に因ること、これは溶着起因による被膜の剥離・破壊が進行することで生じることを明らかにした。このすくい面の損傷抑制には被膜/母材界面の密着性(元素拡散の均一性と量が多いことが特徴)を改善することで、切削中のすくい面剥離量を改善した。
③協会に対する啓発度
ステンレス加工においても高能率(高速)加工の要求は多く、このT6100シリーズは高速加工用で安定・長寿命な加工を実現する。特にT6120はオーステナイト系ステンレスを切削速度200m/min以上で加工しても安定した寿命を示した。ユーザの部品加工時間を短縮し、生産性の向上に大きく貢献している。
8コーナ高送りカッタ DoFeedQuadの開発 | 株式会社タンガロイ |
吉田 悟(よしだ さとる) 今田 静恵(こんた しずえ) 坂内 由昌(ばんない よしまさ) |
①技術の特徴
「DoFeedQuad」は、超高能率で優れた経済性を発揮する次世代高送りカッタである。これまで以上の高能率化には、高負荷時の刃先の挙動を抑制すること、低抵抗で強靭な切れ刃であることが求められ、経済性の観点では、コーナ数が多く、シンプルな設計が望ましい。「DoFeedQuad」は、これらの課題を解決した製品である。
②新規性/独創性
キーテクノロジーである「新ダブルダブテールクランプ」は、インサートを強固に固定する全く新しい構成のクランプ機構で、ねじサイズやインサートサイズを最小化しつつ、切削時のインサート変位量を50%以上低減、これまで不可能であったap=2mm、fz=2.0mm/tの高能率安定加工を実現した。
③協会に対する啓発度
「新ダブルダブテールクランプ」を採用した「DoFeedQuad」は、平面加工の加工能率を飛躍的に向上することができる。多コーナで小型のインサートは工具費低減に直接的に貢献できると共に、加工単位当たりのレアメタル使用量が最小となり、環境性能にも優れる。環境調和製品認定(2013-003)
内径加工用工具 DoMiniTurn/Bore Lineの開発 | 株式会社タンガロイ |
山口 岳志(やまぐち たかし) 小池 渉(こいけ わたる) 木村 有伸(きむら ゆうじ) |
①技術の特徴
『DoMiniTurn/Bore Line』は、ポジとネガの逃げ面を持つ独自のインサート形状により、従来片面ポジタイプインサートが使用されている小径内径加工領域において、両面化によるコーナ数の倍増で経済性を高め、かつ、ラジアルレーキの低減により、大きな切りくずポケットと低抵抗化を実現し、ポジインサートと同等の切削性能を可能とした。
②新規性/独創性
ポジの逃げ面により、ポジインサートと同等のラジアルレーキを実現したことにより、低抵抗化及び大きな切りくずポケットを設けることが可能となる。また、ネガの逃げ面により、ダブテール構造を用いた強固なクランプを実現し、耐びびり性および切りくず排出性を向上している。
③協会に対する啓発度
『DoMiniTurn/Bore Line』は両面化による使用可能コーナ数の倍増と、「ダブテールクランプ」による強固なクランプにより、お客様の生産コストの低減に貢献している。使用可能コーナ数に対して、レアメタル使用量も下がり、環境負荷を低減し社会に貢献している。環境調和製品認定2012-016
高経済性6コーナドリル TungSix-Drillの開発 | 株式会社タンガロイ |
佐治 龍一(さじ りゅういち) 川崎 創造(かわさき そうぞう) 神永 篤(かみなが あつし) |
①技術の特徴
インサート交換式ドリルを使用する際の利点は、被削材に合わせたインサートを選択できること、再研削が不要で容易に使用できることなどである。本開発では、これらの利点に加え、従来の4コーナ使用の製品に対する経済的な利点を伸ばすことを狙い、世界初の6コーナ使用可能なインサート交換式ドリルを開発した。
②新規性/独創性
インサートの片面には外周刃を3コーナ、もう片面には中心刃を3コーナ配置し、逃げ面形状を工夫することで、コーナ数を従来比1.5倍としながらも、刃先強度向上と、切削抵抗低減に成功した。専用設計された高速対応新材種AH9030との組合せで、高能率化も同時に達成した。
③協会に対する啓発度
『TungSix-Drill』は、使用可能なコーナ数を従来の4コーナから6コーナに増やしつつ、相反する低抵抗化を実現することで、インサート交換式ドリルの高経済性の利点を伸ばし、お客様の生産コストの低減に貢献している。環境調和製品認定 2012-020
鋼加工用コーティング材種「DM4」の開発 | 日本特殊陶業株式会社 |
波多野 祐規(はたの ゆうき) 豊田 亮二(とよだ りょうじ) 吉川 文博(きっかわ ふみひろ) |
①技術の特徴
被削材の難削化により従来材種では「高速加工」や「長寿命化」への対応が困難になりつつある。特に溝入れや突っ切り加工では、「耐酸化性」「耐摩耗性」「耐溶着性」「耐密着性」が要求されこれらを同時に満たすことは困難であった。本開発では結晶格子の歪抑制による膜内及び膜界面の残留応力の緩和技術、及び固体潤滑技術で、「耐酸化性」「耐摩耗性」だけでなく「耐溶着性」「耐密着性」の向上を目的に開発を行った。
②新規性/独創性
膜の高硬度化に伴い密着性が低下するトレードオフの課題を打破する為、3つの新技術を各層に盛り込み、「耐酸化性」「耐摩耗性」と、「耐溶着性」「耐密着性」の向上を両立させた。
表面層:固体潤滑性に優れ、摩擦係数を低減したTiN系耐溶着膜
中間層:下地層との密着性を高め、表面層側を高硬度化したTiCN特殊傾斜膜
下地層:結晶構造を制御し圧縮応力を低減。基材との密着性を高めたTiAlN系特殊硬質膜
③協会に対する啓発度
鋼系の溝入れ、突っ切り加工等において、安定した長寿命化が可能となりユーザーより要望される高能率加工と工具費削減に大いに貢献することができた。また耐溶着性の向上により高精度、美麗な加工面を得ることができ、品位向上も同時に果たすことができ、ユーザーから喜びの声が多数寄せられている。
WC-FeAl系超硬合金の開発 | 株式会社ノトアロイ |
澗張 光広(まばり みつひろ) 向出 保仁(むかいで やすひと) |
①技術の特徴
熱間鍛造金型用材料として、超硬合金はCoの軟化のため使用することが難しく、さらなる難加工材料への対応やニアネットシェイプに対応するためには既存の材料では限界である。そこでCoの代替として、硬さが高く、耐酸化性に優れるFeAl金属間化合物を結合相に用いた、WC-FeAl系超硬合金を開発した。
②新規性/独創性
WC-FeAl系超硬合金は産業技術総合研究所にて基本特許として開発された技術であり、弊社にて性能向上のための製造プロセス及び大型成形体焼結技術の開発を行った。強度は抗折力で2.9GPa(従来比70%up)を達成し、寸法ではφ140×50mm(従来比約8倍)の均一な焼結体を得た。
③協会に対する啓発度
Coが特定化学物質に指定された今、Coの代替は急務である。WC-FeAl系超硬合金を用いることで、Coレス化が図れ、環境に優しい製品が提供できる。使用用途として、温・熱間鍛造金型や粉末プレス型がある。温・熱間鍛造金型では寿命が2~5倍になることが期待され、粉末プレス型では高圧力での使用が可能となった。
多機能正面フライスの開発 | 日立ツール株式会社 |
日畑 忠広(ひばた ただひろ) 村 尚則(むら ひさのり) 村田 智洋(むらた ともひろ) |
①技術の特徴
面削加工は最も一般的な加工であり、使用する機械、ワーク、工具形状も多岐にわたる。従来は工具管理工数の増加を避けて汎用的な工具を選択する場合が多く、加工能率を犠牲にしていた。本製品は従来製品では二者択一であった汎用性と加工能率を両立できるように改良した点に特徴がある。
②新規性/独創性
従来、コーナ数が異なるインサートが同じボディに取付く工具はあったが、加工改善のアプローチは同じであった。本開発品は1種のインサートと切込み角が異なる2種のボディで、高送りと高切込みという全く異なるアプローチでの加工を可能にした。これにより、インサート管理を煩雑にする事無く、加工環境に合せた能率改善を可能にした。
③協会に対する啓発度
本インサートは、高切込みボディを用いて仕上げ加工も行うことが可能で、その際に使用する切れ刃は高送りボディで用いる切れ刃と独立した設計となっている。これにより、2種類のボディを併用することで1つのインサートを最大で16コーナ使用できる環境にやさしい製品とした。
高硬度鋼用高能率多刃ボールエンドミルの開発 | 日立ツール株式会社 |
堺 真二郎(さかい しんじろう) 居原田 有輝(いはらだ ゆうき) 佐藤 亮介(さとう りょうすけ) |
①技術の特徴
本製品は、今後更に需要の増加が見込まれる高硬度鋼を高能率に直彫り加工することを狙ったものである。加工能率向上を実現するための多刃化において生じるボールエンドミル特有の”先端部の技術的課題”を解決した点、および最新のCAD/CAMに搭載されるツールパスを有効に活用できる形状に設計した点に特徴がある。
②新規性/独創性
従来よりボールエンドミル先端部は切削速度がゼロになるため切削性が低下し、また多刃にすることで切り屑詰まりが生じるという課題があった。本工具においては、先端部の切削速度ゼロ点を切削点から回避し、かつ切り屑排出向上のため独自の先端形状を有することで上記課題を解決し、高硬度鋼を高能率加工できる多刃ボールエンドミルを実現した。
③協会に対する啓発度
高硬度鋼を高能率で直彫り加工できることで、鋼材の熱処理工程に要する時間を削減し金型製造期間を大幅に短縮することが可能となる。また、最新のCAD/CAMに搭載されるツールパスを最大限に活用できるため、従来では成し得なかった新たな加工提案で市場へ貢献可能である。同時に加工機等の消費電力を削減可能とし環境負荷低減にも貢献するものである。
フジロイ摩擦攪拌加工用ツールの開発 | 冨士ダイス株式会社 |
川上 優(かわかみ まさる) 北村 幸三(きたむら こうぞう) |
①技術の特徴
摩擦攪拌接合(FSW=Friction Stir Welding)で用いられる摩擦攪拌加工用ツールは、アルミニウムまたはアルミニウム合金については、SKD製が長寿命で問題なく使用されていますが、鉄または鉄合金特にステレンスについては、SKD製では、直ぐ摩耗するためより長寿命の材料が求められています。
②新規性/独創性
弊社は、ステレンス用の摩擦攪拌加工技術の開発を、地方独立行政法人大阪府産総研、大阪府立大学およびアイセル株式会社と共に行い、摩擦攪拌加工用ツールに超硬合金を適用するには、硬さ、破壊靱性値、高温硬さおよびWC粒度を適切に規定することを見い出し、適する超硬合金をフジロイ摩擦攪拌加工用ツールとして完成・開発に成功しました。
③協会に対する啓発度
摩擦攪拌加工用ツールは、鉄または鉄合金特にステレンスについては、比較的低価格で長寿命の材料が開発されていませんでしたが、本開発で超硬合金の中の特定の特性の材種が適することを明確にしました。本分野はこれから本格化する分野であり、期待されています。
Rドリルの開発 | マコトロイ工業株式会社 |
東脇 啓文(ひがしわき ひろふみ) 橋本 英二(はしもと えいじ) |
①技術の特徴
本製品は、航空機等で使用されている炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の穴明け時に発生しやすいデラミネーション(層間剥離)の抑制、高能率、長寿命を狙ったものである。ダイヤモンドコーティングにより耐摩耗性に優れると共に、切刃エッジ部の摩耗に伴う切削性能の低下が抑えられ、より多くの加工にわたり切削性能が維持できる点に特徴がある。
②新規性/独創性
従来の切削工具では切刃部のすくい面及び、逃げ面全体にダイヤモンドコーティングが施され、CFRPへの穿孔を行うと切刃エッジ部の摩耗が進行するに従って、切刃エッジ部がR形状に摩耗し、大きくなり、切削性能の低下によりデラミネーションを発生させ穿孔寿命が短い。ドリル先端切刃R形状、セルフリグラインド機構の採用によって、切削性能の低下を抑制することで、デラミネーションの抑制、高能率、長寿命を実現した。
③協会に対する啓発度
従来工具と比べて穴品質を維持し、使用工具本数の低減、加工効率の向上により航空機業界などの加工、設備投資に貢献。又、資源の有効利用に効果があり、電力の削減により環境にやさしい製品を提供。
鋼旋削加工用CVD材種 MC6025の開発 | 三菱マテリアル株式会社 |
素花 章(そばな あきら) 平方 史生(ひらかた ふみお) |
①技術の特徴
従来、鋼部品の加工においては切刃領域に生じる疲労亀裂を起点としてチッピング損傷が発生しやすいという課題があった。本製品の開発においては疲労亀裂の発生箇所および発生形態に着目し、超硬合金母材の改良およびCVD被膜の結晶方位制御により、疲労亀裂起因によるチッピングを防止するとともに、高耐摩耗コーティングの適用により、従来製品と比べて安定した長寿命化を実現した。
②新規性/独創性
加工後切刃の調査より、切刃稜線部に生じる疲労亀裂が母材の一定深さ以上に進展することがチッピング発生の主要因であると特定し、その進展を防ぐために切刃稜線付近の母材結合相濃度の増加を試みた。新原料を含めた成分組成と焼結プロセスの最適化により、当該領域の結合相濃度を従来の約2倍に高めた母材の製造を達成し、これにより耐チッピング性の大幅改善を実現した。
さらに、Al2O3層の特定方位の配向度と耐チッピング性に相関関係があることを確認し、コーティングプロセスの最適化により最適配向度への安定制御技術を確立し、さらなる耐チッピング性の向上を実現した。
③協会に対する啓発度
従来製品では突発的なチッピング発生の懸念から工具交換の定数を低く設定することが多かったが、本製品では切れ刃を本来の工具寿命まで使い切ることが可能となった。これによりユーザーにおける単位加工数量に必要とされるインサート個数が減少するため、ユーザーにとっての工具コストの低減、および超硬工具製造における希少資源使用量の削減という観点で貢献度が大きいと考える。
スマートミラクルエンドミルの開発 | 三菱マテリアル株式会社 |
深田 耕司(ふかた こうじ) 橋本 達生(はしもと たつお) 大田 康史(おおた やすし) |
①技術の特徴
本製品は「Ti合金やステンレス鋼などの難削材の高能率加工」を目的として開発したエンドミルである。前述の難削材は、「熱伝導性が低く、加工硬化しやすい」という材料特性から、これまで高能率に加工することができなかった。
今回、新たに開発した「スマートミラクルコーティング」に平滑化表面処理技術を適用することで、切削抵抗や切りくずの溶着を抑え、高能率かつ長寿命な加工を実現した。
②新規性/独創性
従来の表面平滑化技術では、切れ刃が丸くなり母材が露出する問題があった。新開発の「ゼロミュー・サーフェース処理」で、平滑表面と超硬エンドミルに必要なシャープエッジの両立を実現させた。さらに、新開発のアーク放電制御技術による皮膜組織の最適化を図った「スマートミラクルコーティング」で、特に難削材における耐摩耗性能を向上させた。
③協会に対する啓発度
前述の新開発技術の採用で、難削材を従来比2~3倍もの高能率に加工でき、かつ長寿命化を実現。航空機部品などの生産性向上やリードタイム短縮に大きく貢献している。また、様々な加工に幅広く対応できるよう、3枚刃スクエア、4枚刃ラジアスなど6シリーズをラインアップし、ドリリング用特殊形状やクーラント穴付も揃え、適用範囲を拡大させた。