令和3年度 日本機械工具工業会賞
技術功績大賞
新世代コーティング「Absotech®X」の開発 | 住友電工ハードメタル株式会社 |
奥野 晋、小林 史佳、中山 裕博 |
新規性
CVD法を用い、ナノメートルオーダーでの組織制御を行うことで、従来技術では実現することが不可能であった、平均含有比率80%以上という非常に高いAl含有量のAlTiNを、高硬度のf㏄構造を100%維持したままコーティングする技術を、世界で初めて確立した。同技術を切削工具へ適用することで、従来のCVD材種の耐摩性と従来PVD材種の耐欠損性を兼備する、高Al含有純立方晶ナノ積層CVD-AlTiNコーティングの量産を実現した。
技術功績賞
非鉄用底刃付きスレッドミルの開発 | オーエスジー株式会社 |
依田 智紀 |
新規性
①スレッドミルは側面切削の為、めねじ口元と奥で径差が大きくなる問題点があった。
側面からの応力の影響が出にくいよう、スラスト荷重が強くなるような底刃形状に工夫した(イメージとしては突っ張り棒とおなじ)ことに新規性がある。
②高能率を狙いスクイを強くし、刃数を増やすと、切りくずがつまるという問題点があった。底刃をネガにして切りくずを細かくし、2溝にすることで切りくず排出性も向上させる工夫をした。
高剛性突切り工具「TungFeed-Blade」の開発 | 株式会社タンガロイ |
宮澤 駿輔、谷口 雅弥 |
新規性
本製品は、ツールブロックがブレードと主分力方向で当接する機構を有し、ブレードのたわみを抑制する高剛性な構造である点に新規性がある。工具高さを従来比最大2倍に向上させたブレードは、3ポケット仕様で経済性にも優れる。ツールブロックは、旋盤タレットと広い接触面積で拘束され、高能率加工にも耐えうる。ツールブロックにサイドスラストピンを設置することにより、ブレードの位置決め精度を向上と同時に、操作性も向上させた。
鋼旋削加工用CVD材種「MC6115」の開発 | 三菱マテリアル株式会社 |
佐藤 賢一、真田 智啓、佐藤 敏博 |
新規性
切削工具用の硬質皮膜として当社を含めAl2O3が使われていたが、結晶配向において当社従来品の10倍以上の値を示す新しいAl2O3結晶配向制御技術の適用により高速切削加工で優れた耐摩耗性を発揮することができる。
さらに、積層皮膜の層間付着強度を向上させる新結合層と皮膜内の引張応力の緩和技術の適用により切削時の高い刃先安定性を実現した。
技術奨励賞
ハード加工用スカイビングカッタの開発 | 株式会社 不二越 |
山﨑 格、佐藤 嗣紀、西野 達也 |
新規性
熱処理後の高硬度歯車の仕上げ加工において、超硬スカイビングカッタを採用するが、工具の欠け、摩耗により短寿命という問題点があった。これに対し、ハードスカイビング加工に特化した、形状、コーティング、材料を採用することによって、安定した工具寿命を達成することを実現したことに新規性がある。
両面インサート式汎用肩削りカッタWWXの開発 | 三菱マテリアル株式会社 |
神原 正史 |
新規性
インサート式ミーリング工具はワークと刃先の干渉を防ぐため、切れ刃を工具外側に傾ける(2番逃げ)必要性があるが、両面インサート式の場合、分厚いため大きく傾ける必要がある。結果、切れ刃は工具外側に向き、切りくずもその方向へ生成・排出されやすい。特に壁面加工ではワーク壁面方向に切りくずが排出されることになるため、ホルダとワークとの間に噛み込み、インサート欠損やワーク壁面に傷がつくなどの課題がある。
これら課題に対し、インサートブレーカで切りくずを工具内向き方向へ強制的に折り曲げ、噛み込みを防ぐ既存技術は存在するが、切削抵抗は高くなりやすく汎用的に使用することは困難であった。そこで我々は、独自の切れ刃凸形状とねじれすくい面形状を開発し、切りくずを強制的に折り曲げずに工具内側方向へ低抵抗かつスムーズに生成・排出し、噛み込みを抑制する新技術を確立した。
立壁/底面仕上げ用8枚刃エンドミルの開発 | 株式会社MOLDINO |
田牧 賢史朗、 一木 順二、田中 寛明 |
新規性
・従来ロング刃長エンドミルでの立壁仕上げ加工は、刃長が長いため同時接触刃が増え、切削抵抗とその変動が大きく、壁面の倒れを抑制することは困難であった。そのため、高精度に加工するためには再加工を繰り返さなければならず、目標精度を確保するための修正工数増加に課題があった。そこで同時接触刃を考慮した外周刃設計(外周ねじれ角38°、刃数8枚刃、ap0.5D、刃長1D)を採用することで、切削抵抗の変動を最小化し、ロング刃長エンドミルに対して加工能率を損なわずに、再加工無しで高精度な立壁仕上げ加工を実現できるところに新規性がある。
・さらにコーナR刃の刃付け方法を工夫することで、底刃とコーナR刃のつなぎ目をシームレス化し、従来底面仕上げ加工時に課題であった不均一なカッターマークや白濁化を抑制することができ、高品位な底面仕上げ加工も可能となる。
超硬合金高能率加工用エンドミルの開発 | ユニオンツール株式会社 |
齋藤 拓信、渡邉 昌英 |
新規性
超硬合金加工用エンドミルとして当社従来品の「UDC-Fシリーズ」があるが、工具寿命と加工能率には改善の余地があった。被削材が超硬合金であることから加工能率の向上は困難と思われていたが、今回の開発品である「UDC-Hシリーズ」では高能率加工に耐えうる新しい刃先処理と、耐摩耗性を強化した改良型ダイヤモンド皮膜を採用することで工具寿命と加工能率を両立して向上させたことに新規性がある。